鉄道ファンにとって胸を痛める話だ。
それはちょうどこの時期流れる
スポーツ選手の戦力外通告や任意引退の
ニュースにも似ているような気がする。
しかも、消えてゆく列車たちにはほとんど
移籍による生き残りの道はない。
まして、合同トライアウトのようなシステムもない。
あの日、そこまで神妙になっていたわけではないが、
なんとなくそんな事を思わせる出来事があった。
あまりにも急展開の撮影会だったため、
前準備も下調べもなく京都駅に来ていた僕は
構内放送に驚きと喜びを大いに感じた。
「長らくお待たせいたしました。
1番線に列車が参ります。
東京行き寝台特急出雲・・・」

深夜の撮影がこれまで大阪駅のみだった僕は
大阪を通らないブルトレ「出雲」の存在を
ほとんど意識していなかったのだ。
しかし、まさにこの瞬間が来年の旅行の伏線となった。
DD51ディーゼル機関車からEF65PF機への交換を終え、
列車は京都から去っていった。
このころの出雲は2往復を誇る存在であり、
山陰という特殊区間を走ることもあり、
根強いファンと需要に支えられていた。
まさに現役バリバリの選手。
それに対し、今回のお目当て「金星」は、
数日後に引退を控えているせんしゅ。
まして、華々しいセレモニーの上野口特急たちとは
対照的なひっそりとした去り際。
なんだか、清原と野茂を感じてしまう。

でもやってきた金星号は本当に美しかった。
今まで写真で見ていた以上にヘッドマークが
紫色に輝いて最後の力を振りしぼっているようにも思えた。
後日、大阪の交通科学館に行ったときのこと、
前回は金星のマークだった583系の展示車が
「なは」のマークに変更されていた。
